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「同居人」 制作年 2023   ビデオインスタレーション

コロナ禍が始まった頃に働いていたある職場での経験を起点にした作品。私は難聴・発達障害の重複障害者である。その職場に勤めるまでは、障害を持つ自分に対しては目を瞑り何とか普通になろうと足掻こうとしていた。

しかし、その職場に勤めた際に持って生まれた身体的特性でどうにもならない待遇や能力の格差を経験した。その職場でそれを痛感してしばらくはそのことを誰にも言えず、ただ自分の心の中に無理矢理閉まっておくことしかできなかった。

そういった暗闇の中で芸術を始めた頃の自分を振り返った。学生時代に運動部でなぜか通常の人と同じように臨機応変な対応ができず、行き詰った私はそのフラストレーションを暴力で消化するようになり、謹慎処分を受けた。謹慎中に時間が空いた私はたまたま漫画を読んで自分でもできそうということから絵を描き始めたのである。また、その頃から自分の身体には悪霊か何かが憑依していると思い込むようになった。

その悪霊の正体は当時、被害者でありながらも自分も加害者として楽しんでいた柔道の暴力とはまた違った、身体による格差や差別という笑えない暴力をもたらした発達障害という同居人だった。

発達障害を同居人と定義し、その遺伝的ルーツであると考える、血縁者であり漫画を描き始めた頃に在籍していた高校の遠い先輩である、ある人物の遺品と共通のものを組み合わせ、同居人の愚像を作成した。それを学ランと軍服に相互に着替え叩いていった。また、展示空間には当時から描いている漫画を展示した。

 

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同居人の”病理”の続きの話

 作品の評価は見る人それぞれによって異なるので、それを承知の上で個人的な個展評をする。
前述で述べた職場での経験以降、かってのような調子で作品を制作することが困難になっていた。今回の個展も開催当初はどこかその流れを断ち切ることができず、開催はしたものの、モヤモヤが残るそんな感じの出来栄えと自分は感じていた。

しかし、そんなモヤモヤを断ち切る出来事が開催終了から3ヶ月後に起こる。
この作品の起点となった、当時在籍していた職場が虐待や不正受給で全国ニュースになった。それにより、自身のモヤモヤが少し緩和され、その個展の物語は完結したかに感じられた。





 

​2023年9月2日に青森国際芸術センター学芸員・慶野結香氏と沖縄在住のアーティストの西永怜央菜氏(オンライン出演)を招聘し、アーティストトーク「私たちは摩擦の中で生きている 発達障害と社会/教育/美術」を開催した。

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​展覧会にさらっと設置していたドローイングは今回のニュースで報道された職場でみた障害者と健常者の力関係を揶揄していた。(教室の札の白塗り部分は法人名の1部が書かれている。)

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渋谷剛史展「同居人の病理」

会期 2023年8月27日〜9月7日 会場 TORN ANOTHER ROUND-2​

 

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